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徒然随筆「愛知県における町並みと保存運動01(犬山市本町通)

 国宝犬山城を控える犬山市本町通は、都市計画道路を廃止して歴史的町並みを保存したことと、行政との協力による「まちづくり会社」の活動により、にぎわいを取り戻している。経緯を概観すると、1980年代に地元まちづくり会が発足し、1990年代に都市計画道路である本町通の道路拡幅を凍結して廃止に向かい、官民一体となったまちづくり運動が推進された。2000年代に入ると地域や目的ごとに数々のまちづくり団体が結成され、町並み保存やまちの活性化に寄与してきた。2004年に「犬山まちづくり会社(TMO)」が設立されると、空き家活用やイベントの開催などが活発になり、現在に至っている。併せて市の都市計画や景観整備等の制度が整備され、町並み保存に寄与している。特筆すべきは、本町通周辺地区内にある国登録有形文化財の保存修理に補助金が交付されることで、筆者は他の事例を知らない。
 加えて300年以上の歴史ある犬山祭は未だ健在で、ユネスコ無形文化遺産に登録申請中である。国指定重要無形民俗文化財の犬山祭は、1635年に始まる祭礼で、現在13輌の山車(やま)が4月初旬の祭礼日に巡行し、旧いまちなみに曳行される景観は江戸時代へタイムスリップした感覚と感動がある。犬山祭の山車は、山車蔵に組立てたまま保管されるわけではなく、祭の前に祭組の町民が組立てることに大きな特徴がある。愛知県の山車はこのパターンが多く、これ故にユネスコ無形文化遺産に申請される一つの理由かもしれない。
 このように町が活性化してくると次の課題が検討されるようになり、2016年に地元有志により「城下町を次世代につなぐ会」が発足した。元市長や市職員OB、地元まちづくり会の有志などが会合を持ち、ワークショップなどを通じて犬山市民が抱くまちづくりへの要望や課題などを抽出し、次の世代へつないでいく目的で活動することが申し合わされた。2016年2月に第1回ワークショップが開催されると、大勢の市民が参加議論し、期待や要望、問題点や課題などがクローズアップされた。 犬山の町は国宝の犬山城と如庵を配し、歴史ある犬山祭を民衆の文化と意識しつつ地域コミュニティを維持しており、関連するようにまちなみ保存を進めてきている。他都市と同様に、歴史的建造物の保存は町家の維持管理からまちなみ保存に進むのだが、犬山市の場合はこれに文化財と祭礼が絡み合って独自の活動が進んでいる。しかしながら、維持管理と担い手確保の課題も顕在化しており、今後の検討課題としてとらえられている。


本町通のまちなみ

本町通のまちなみ

犬山祭とまちなみ

ワークショップの風景

(2016.6.20/嘱託研究員・田中清之)