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都市とエコロジカル・ネットワーク
 愛知・名古屋ではCOP10が終了し、生物多様性への関心が高まっている。生物多様性というと里山に代表されるように郊外や山間部での人と自然の共生をすぐにイメージされると思うが、自然とは相反する空間といえる都心部においてもその動きが活発化している。
  この名古屋では、ビル屋上を利用してミツバチが飼育されている。中区丸の内では「マルハチプロジェクト」が、栄では鹿島建設による「鹿島ニホンミツバチ・プロジェクト」が動いている。また、チョウチョが飛ぶまちを目指し、竹中工務店が「蝶の飛ぶまちプロジェクト」の調査を実施。そこから地域に波及し広小路通の商店街では「蝶の飛ぶ商店街プロジェクト」に取組んでいる。
  東京でも、森ビルが虎ノ門の再開発事業において生物多様性に配慮した緑地計画を導入し、高い評価を得ている。2010年度のグッドデザイン・フロンティアデザイン賞では、鹿島建設が進める「4つの指標種を用いた生物多様性都市のデザイン『いきものにぎわうまち』」(ニホンミツバチ、ヤギ、ベンケイガニ、シジュウカラの4つの指標種を用いて、都市における生態系サービスを「見える化」するプロジェクト)が受賞している。
  このように都心部において生き物目線でのまちづくりが進められている。都市部は人の活動が中心の場であることは言うまでもないが、そこで自然の生き物を身近に見られたら、より素晴らしいと思う。(これは私の主観。人によっては、綺麗なチョウはいいが、その幼虫や蛾は見たくないという人もいるだろう。その辺りの合意形成をどうするかは課題?)
  生物多様性の観点から都市空間のあり方を考えると、エコロジカル・ネットワークをいかに形成するかが重要になる。つまり、生き物が生息・移動しやすい水と緑の拠点・回廊づくりである。公園にはまとまった緑を配置し生息しやすくする。街路樹はそれらを途切れることなく繋ぐとともにブツ切り剪定をやめて移動しやすくし、樹種も見た目や耐久性を重視するよりは生息に適した在来種を選ぶ。ビルの屋上緑化の際にはビオトープを整備するなど様々な取組みが考えられる。都市計画にもひとつのレイヤーとして加え、計画的なネットワーク形成が進められるとよい。
  最後に。名古屋都心部は道路空間比率が非常に高いのが特徴である。今後車から人優先の都心へと変えていく中で、車が減り、道路空間には余裕が生まれるだろう。その際にはエコロジカル・ネットワークとして利用することも考えていただきたい。生き物と共生できる都心はCOP10開催地にふさわしい都市の将来像のひとつではないだろうか。
(2011.3.28/櫻井高志)