現在の位置:TOP>まちのトピックス>すまいまちづくりコラム>ポジティブ心理学とまちづくり WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

ポジティブ心理学とまちづくり
  日経ビジネスON LINE(2011.12.6)を読んでいたら、「ハーバード大学で最も学生に人気のある授業とは?」というタイトルに目がとまりました。白熱教室で有名になったマイケル・サンデル教授の「『正義』について語ろう」の授業でなく、タル・ベンシャハーのポジティブ心理学の授業だという。
  ポジティブ心理学というと、個人の大成功の経験から気の持ち様を教える自己啓発もので、「ああ、またぞろ自己啓発本か」「夢をかなえるゾウか」と思いましたし、「幸福を科学する」となると何か宗教めいたものを感じました。しかし、そこには「学」がついているので、根拠があいまいでなく、再現可能で成果もきちんと評価がなされ、メタ分析(入手しうる幸せに関する科学的研究−延27.5万人を対象に200以上の研究の統合化)がなされたうえで、ポジティブ心理学という学問分野が確立されました。
  この分野で登場する人物は、創設者のマーティン・セグリマン(1998年当時の米国心理学会会長)、この分野に世間の目を集めた若手研究者タル・ベン-シャハー(ハーバード大学での肩書不明)、その授業を助手として支えた後に、ポジティブ心理学を武器に企業等のコンサルタントとして世界を飛び回っているショーン・エイカー等々がマスコミ等で取り上げられています。
  さて、ポジティブ心理学とは何でしょうか?従来の心の病を焦点にする心理学でなく、心の健康を焦点にする心理学のことのようです。そして、物事の「成功の先に幸せがある」のでなく、「幸せの先に成功がある」という考え方で、研究結果がそれを裏付けているというものです。ポジティブな感情は、創造性や知的能力を増すだけでなく、ストレスや不安をすみやかに解消する効果があります。よって、プレゼン(仕事)の時にプレッシャーをかけると、それに負けて失敗するので、逆にプレッシャーを解消するほうがプレゼン(仕事)はうまくいきます。なお、「幸せ」の定義は、前述のセグリマン教授によると「意味や目的の深い感覚を伴う喜び」のポジティブ感情を覚える状態を指し、「喜び」「夢中」「意味見出し」を計測可能な三つの要素としています。
  これをまちづくりの分野に当てはめてみると、まちの欠点を拾い上げてその課題解決を図るよりも、まちの長所を拾い上げて、その長所を一層伸ばし、欠点を改善していく方が、よりよいまちができるということなのでしょう。換言すれば、いいまちに住んでいると考えて人々が行動する方が、ひどいまちに住んでいると考えて行動するよりも改善する効果が高くなる。まちの魅力発見、地域のお宝発見が最近のまちづくりテーマになっているのも、その考え方の延長上にあるのではないでしょうか。

《参考文献》
ショーン・エイカー「幸福優位7つの法則」徳間書店2011.8.31
タル・ベン・シャハー「ハーバードの人生を変える授業」大和書房2010.11.30
タル・ベン・シャハー「Happier」幸福の科学出版2007.12.17

(2012.1.16/井澤知旦)