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緑をネットワークすること
  名古屋市の最新の緑被率は、平成22年23.3%。平成2年からの20年間、一貫して減り続けています。緑の減少を食い止め、増やすことは当然大きな課題ですが、しかし、単に緑を増やせばいいのかというと、そうではなく2010年のCOP10以降は生物多様性への配慮が重視され、生き物との共生を目指した緑が必要となっています。そのために多くの街で掲げられているのが、「水と緑のネットワーク」や「水と緑の回廊づくり」といった方法です。名古屋市でも緑の基本計画のリーディングプロジェクトとして挙げられています。
 また昨年には都市緑地法運用指針が改正されましたが、そこでも生物多様性保全とそのためにエコロジカルネットワーク形成の必要性が追加されるとともに、その具体的な指針として「緑の基本計画における生物多様性の確保に関する技術的配慮事項」が参考資料として作成されました。内容を非常に簡単にいうと、緑地(エコロジカルネットワーク)形成のあり方として、「中核地区」「拠点地区」という生き物が生息できる大きな緑のまとまりをつくり、それらを生き物が移動できる「回廊地区」で結ぶとともに、外部からの影響を減らすために全体を「緩衝地区」でカバーしましょうというものです。
 しかし、このネットワークをどのような緑でつくるのか、具体的な計画に落とそうとするのは意外に困難なのです。理由は、生き物といっても多種多様であり、種類によって好む環境が異なるからです。例えば、鳥類や哺乳類、昆虫類では移動できる距離が違うため、ネットワークの間隔も違ってきます。また鳥類でも高木街路樹の並木だけでもネットワークできるものから、逆に低木や地面の緑もつながっていないとネットワークできないものもいます。その他にも生き物ごとに細かく見ていくと、どういう緑で結ぶかは非常に複雑なことがわかります。「中核地区」や「拠点」には当然数多くの種類がいるわけであり、それらを包括した視点からの緑のネットワークを構築するのが理想なのですが、その手法はいまだ研究途上にあります。しかし、愛知目標のミッション(短期目標)では2020年までに「生物多様性の損失を止めるために、効果的かつ緊急な行動を実施する」となっており、まったなしの状態であるため、できるところから試行錯誤でもこの緑のネットワークづくりを進めていかなくてはならないのです。
(2012.4.23/櫻井高志)