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あんなに考え抜いてビジネスの48手を打ち出せるのか?
 中日新聞の政治4コマ漫画で、麻生太郎元首相ができて、「今度の選挙では大島だ」と叫んで、周りの連中が「なんで?」、「いや前田か?」といったやり取りであったが、政治の選挙よりもAKBの選挙のほうが衆目を集めるといった風刺なのであろう。
 このAKBブームを日経ビジネス(2011.6.6)も見逃さない。一つの視点はCMでAKBが起用された会社(例えばモーニングショットのアサヒ飲料や日本ヒューレットパッカード)の銘柄の株はおおむね好調の様である。AKBのファン層に商品が浸透し、売り上げを伸ばすからであろう。
 もう一つの視点はビジネスの経営モデルである。パソコンのような標準化部品を組み立てて新しい商品を打ち出すモジュラー型と自動車のような技術を擦り合わせしながら作るインテグラル型があり、日本はインテグラル型で生き残りを図るべきとの指摘がある(藤本隆宏「能力構築競争」中公新書2003.6)。例えば同じメーカーでも、モジュラー型のデジタルカメラは中国で、インテグラル型の内視鏡は日本でと分担している。
 そんなかでAKBはモジュラー型で成功している例であるとの指摘である。つまり、@普通の女の子を集めながら、ユニット組み換えや総選挙によるAKBの価値を高めていること、ACDだけでなく、イベントやグッズなど多様な展開を図っていること、B地域ごとに 類似グループ(AKB、SKE、NMB、HKT)を展開していること、の3つである。
 @は「普通の女の子」を標準化部品、「AKB」をパソコンやデジカメに置き換えればわかりやすい。
 Aは音楽ソフト生産額(レコード、CD、カセット等)が1998年の6,075億円をピークに減少し、2009年には3,165億円まで落ち込んでいる。最近ではミリオンセラーが出にくくなっている。かわって音楽配信が増えているのだが、統計を取り始めた2005年の343億円から2009年の910億円と急増したが、2010年は860億円と減少している。ちなみに2005年の音楽ソフトは4,222億円なので、この減少を音楽配信がカバーしているのかといえば、全くし切れていない。音楽で売れなければ、多様な展開がなされる。それが先に見たイベントやグッズであり、選挙となればメンバー紹介の書籍が売れ、単体やグループで映画やドラマ、バラエティ番組に出演し、売り上げを伸ばしている。各分野それぞれでは売り上げを落としているが、それらをトータルすることでAKBの売り上げを拡大していく戦略である。
 Bはローカルで地元ファン層を獲得したうえで、全国区へ展開していく方式である。あるテレビ番組で、この方式は吉本興業の地方劇場にまねたと言われている。東京や大阪だけでなく、名古屋、札幌、広島、福岡でライブよしもと(劇場)を置いている。これがAKB、SKE、NMB等である。
 エンターテーメントの世界は、無くなることはないが、その内容は大きく変化している。都市計画(あるいは、まちづくり)コンサルタント業界も無くなることはないが、同一分野にとどまっていては、市場規模は縮小である。我々が持っているノウハウを、AKBのように、いかにうまく多様な分野に展開していくのか、あるいは次の大きな大波(市場)を探して、それに乗っていくかの岐路に立たされている。あんなふうに(A)考え抜いて(K)、ビジネス(B)の48手を繰り出していきたいものである。
(2011.6.20/井澤知旦)