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岐阜の川原町の町並みと図書館

 2月14日の日曜日、高齢者2人からの誘いもあって、私と3人で岐阜市立図書館(みんなの森/メディアコスモス)の見学に行こうと言うことになった。ただし、岐阜城金華山の麓にある川原町、ここは戦国時代の道三や信長の遺構、江戸時代や明治時代以降の古い街並みが残るので、ここを散策した後に、図書館に行くことにした。
■日常の暮らしを残す川原町
 川原町は日曜日ではあるが、あまり人は歩いていない。その点で観光地化されていないため、「暮らし」が伝わってきそうだ。犬山城下町の本町通では飲食と物販(お土産)が多く、観光地然としているので、あるガイドの方は、そこよりも日常の暮らしとともに町並みが残るルートを案内してくれたことがある。日常の暮らしを残すこととその建物が継承されることが必ずしも一致しないので、犬山的になるのも一つの方向であろうが、暮らしが見えないと映画のセットのようになってしまう。
 ここに御鮨街道と呼ばれる道がある。長良川で取れたアユを使い、はらわたと骨を取って、ご飯(と麹)を詰めて発酵させる熟鮨(なれずし)を江戸に運ぶのに使われた道だそうだ。そのような鮨屋が立地している。ちなみに、若狭と京都を結ぶ街道を鯖街道と呼ぶが、これも若狭の魚介類を運ぶ道で特に鯖が多かったからそういう名がついた。発酵させる期間(どれだけ発酵にかかるのか?秋刀魚熟鮨で2〜4週間?発酵度合いで好き嫌いがあるから)と江戸まで運ぶ期間がうまく合うのだろう、江戸で食べごろになるのであろうか。今の寿司はミツカンが開発した酒粕から作る酢(山吹)をご飯にまぶして混ぜて握って完成なので、熟鮨とは対極の今でいうファストフードである。よって早鮨と呼ばれるのである。
■メディアコスモスは「熟知(なれっじ)」だ
 そして川原町から歩きながら岐阜市立中央図書館へ行った。いい意味で期待を裏切った図書館であった。大小様々な傘が天井から吊り下げられ、その傘の周りにテーマ別にゾーニングされた開架図書棚が波紋のように並べられている。図書館のイメージは「しわぶき」もない閑静な空間であるが、ここでは心地よいザワめきがある。なにか寛容の幅に広がりができた感じだ。
 2階から1階へ。市民活動や文化活動を支える拠点がここにある。市民活動交流や多文化交流を促進し、展示ギャラリーがあって、絆や文化の拠点になっている。佐賀県武雄市の図書館も民間に指定管理に出し、蔦屋書店、スターバックス、レンタルソフトの民間施設を入れて利用を促進しようというものであるが、メディアコスモスにもスターバックスが入るものの、1階の機能を入れることによって市民の多くがここに集合する。4か月半(2015.7.18〜12.5)で50万人を突破し、年間100万人超を目指している。さらに岐阜市のアーカイブ機能を強化すればさらに存在意義の高い施設になりそうだ。欧州の自治体はその都市の記録文書や絵や写真を徹底して集め、整理保管し、その都市のアイデンティティを確認するものとなっている。日本では不十分である。
 市民が図書館も、市民活動、文化活動等の拠点を利用することで、市民の知的レベルは確実に高まる。一朝一夕では実現しえず、時間をかけてじっくり成熟していくのを待つ。知識という意味でつかわれる「ナレッジ」という英語がある。大阪にある「ナレッジキャピタル(知的創造拠点)」は有名であるが、この施設を「知の拠点」と言っているので、ここでは岐阜らしく「熟知(なれっじ)」という言葉が似合うのではないか。岐阜市はいい施設をつくった。

鮎の熟れ寿しの店
御鮨街道にある鮎の熟れ寿しの店
町並み
川原町の町並み
メディアコスモス外観
みんなの森メディアコスモスの外観
傘の下
傘のもとで本を読む
傘の下
宇宙船が降りてきたようだ
市民活動支援ブース
市民活動支援ブース
施設配置図
1階の施設配置図。市民活動の拠点がここにある
(2016.2.29/井澤知旦)