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愛知登文会 国登録有形文化財特別公開

 10/25、11/3(一部11/1)、11/15、11/22の4日間にわたり、愛知県内の40箇所で、愛知登文会主催の秋の一大イベント「建物特別公開」が実施された。今年は昨年に引き続き2回目の開催だったが、各会場で多くの人々が足を運び、盛り上がりを見せた。今回イベントのスタッフとして自身が関わった建物のいくつかについてレポートしたい。
■10/25:旧今泉医院、トヨテック本社社屋(豊川市)
旧今泉医院は、前面中央に洋風の車寄せが張り出した左右対称の洋風意匠を取り入れた病院建築である。診療室は、診療を行っていた当時使われていた、どこか懐かしい医療設備や薬のビンなどが置かれ、室内全体が大きな窓から差し込む光に照らされて、落ち着きがあり温かみの感じる場所であった。公開が始まると同時に若い男性から近所に住むお年寄りまでたくさんの人が詰めかけ、「近所に住んでいるが、中には入ったことがなくてどうなっているのだろうといつも不思議に思っていた」という喜びの声を聞くことができた。
 トヨテック本社社屋は旧豊川電話中継所本屋であった建物をトヨテック社が買い取り、現在も本社社屋として使用されている、縦長の窓が特徴的なRC造の建物である。訪れた人の中に、昭和初期、建物がまだ電話中継所であった時に働いていたという方々が当時の貴重な写真を手に訪れ、変わりない建物を見て懐かしんでいた。
■11/3:日本陶磁器センター(名古屋市)
日本陶磁器センターで実施された建物解説は、建物中をくまなく見学できて、とても内容の濃い解説となった。玄関から始まった建物解説は、建物外周、地下室、1階のレストラン、レストラン地下のワインセラー、3階の大会議室などへと場所を変え、ところどころで熱い解説が行われた。最後の回は日が暮れる時間帯ということもあり、時間も少々長くなってしまったが、解説者の熱意がよく伝わる面白い解説だった。とても熱心な様子だった参加者の方々も、充実した時間だったに違いない。
■11/15:鈴木家住宅(愛西市)
 鈴木家住宅は佐屋地方での名士で、国会議員を務めた経歴を持つ鈴木仙太郎氏が建てた住宅で、建物公開では1階の豪華な仏間や2階の大広間など、貴重な内部を見学することができた。参加者の中には、所有者ご親族の古い知り合いの方々も来られ、所有者の方や、ボランティアスタッフの方々を交えての交流の場にもなっていた。
■11/22:墨会館(一宮市)
 現在は公民館として市民に開かれている墨会館では、午前中に地域の小学生が建物を解説するという「こどもガイド」が実施された。こどもの中には「(解説を)延長したい」と言う子もおり、皆楽しそうにガイドを行っていた。参加者からは「解説の組み立てがしっかりしていた」「解説に子どもらしさが感じられてかわいかった」「非常に良い取り組みだと思う」などの声を聞くことができた。当日自習室に勉強目的で来た中学生達が関心を示し、解説に参加する場面もあった。

 今回参加した会場で「近所に住んでいるにも関わらず今まで中に入ったことがない」「歴史について知らなかった」ということを実際に耳にした。それ自体は珍しいことではないだろうが、それだけに建物を公開する取り組みが貴重であり意味のあることだと改めて実感した。また、古い写真を手に、個人的な思いを持ってトヨテックに来られた参加者が印象深かった。古い建物は、関わった人が自身の記憶をたどる際に重要な手がかりとなる。遺された建物にはそんな大切な役割もあるのだと思う。

今泉医院
旧今泉医院
トヨテック
トヨテック本社社屋
陶磁器センター
日本陶磁器センター
鈴木家住宅
鈴木家住宅
墨会館
墨会館

(2015.11.24/大河原章介)