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みんなの森 ぎふメディアコスモス 〜見学レポート〜

 この施設は弊社のメールマガジンで何度か紹介しているが、今回は建築についてレポートする。この建築の一番の魅力は居心地の良さであろう。伊東豊雄氏が近年手がけた図書館建築、せんだいメディアテークや多摩美術大学図書館と比較しても、最も快適な環境を生み出しているように感じた。それは、例えるなら、朝もやのかかる静かな森の中にいるようなすがすがしさである。
 この建物、1階は市民ギャラリー、スタジオ、ホールの他、事務所や書庫などの管理部門が入り、2階がまるごと閲覧室となっている。1階からエスカレーターで2階に上がって行くと空気が一変することに驚かされる。
まず気付くのは香りである。東濃ヒノキの薄い木材を何層にも編むことで作られた木造格子屋根が、2階全体をヒノキの香りで包んでいる。ヒノキの香りには「フィトンチッド」という消臭、浄化作用がある物質が含まれており、それが人の精神を安定させるそうで、訪れた人は2階に上がった瞬間、このすがすがしい香りに迎えられる。
 次に気付くのは風である。この建物は空気の流れを実感できるような自然通風をコンセプトに設計されており、そのための重要な装置が、天井から吊るされたグローブと呼ばれるポリエステルで織られた巨大な傘である。このグローブ内で上下の温度差を利用した自然換気を行っている他、外部サッシからも積極的に通風を行い、自然な空気の流れを生み出している。その微細な空気の流れがとても心地良いのだ。
 さらに、光の演出も見せ場だ。トップライトからの光は、一部はグローブの表面で拡散され、一部はグローブを透過し、館内にやわらかく広がっている。また、館内は天井の白木の色、グローブの白、床や書棚のグレーなど、淡い色調で統一されていて、グローブのメッシュの半透明な感じと相まって、もやのかかったようなやさしい光を演出している。
 建物の平面形は四角であるが、館内を歩いているとそれを忘れさせるような広がりを感じるとともに、森の中を散策しているような楽しい気分になる。それは、建築構造がまばらに立つ細い柱のみで、規則的な構成を意識させるものが無いこと、また、普通の建物のような出入り口や廊下を意識させる物が無いこと、書棚などの家具は螺旋状に配置され、常に曲線的な動線になることなど、近年、伊東氏が手掛けた図書館建築の集大成と言える要素の蓄積から表現できた空間であろう。
 中間期の昼間、ここで過ごす時間は最高なので、岐阜市民がうらやましい限りである。

外観
起伏のある屋根が、背後の金華山の山並みとも調和した外観。
閲覧室
ヒノキの香りに包まれた閲覧室。静かな森の中に居るような居心地の良さ。
グローブ
天井から下がる巨大なグローブ。わずかな空気の流れを感じる。
並木
「テニテオ」と名付けられた並木。せせらぎも美しい憩いの空間。

(2015.10.14/堀内研自)