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あいちトリエンナーレ2010 プレイベント「Nibroll(ニブロール)」

 2010年開催される「あいちトリエンナーレ2010」の総事業費が約13億8000万円に上ることが明らかにされた。世界的な不況の影響で当初の予算より約3割減だそうだ。内訳は美術展関連が約6億円、舞台芸術が約4億円、祝祭イベントが約1億円、ワークショップや広告費などが約3億円となる。昨年で3回目を迎えた「横浜トリエンナーレ2008」では、約9億の予算で30万の来場者を集めており、回を重ねるごとに、事業費も来場者も増やしてきている。おそらく、あいちトリエンナーレと横浜トリエンナーレは常に比較されるであろう。決して単純な数字の比較で芸術祭の価値が決まる訳ではないが、2回、3回と続けていくには否応なしに数字の結果が問われる時代である。
 さて、このあいちトリエンナーレのプレイベントとして「Nibroll(ニブロール)」の公演が先月行われた。「Nibroll(ニブロール)」とは、振付家、映像作家、音楽家、ファッションデザイナー、照明美術家など各界で活躍するディレクター集団で構成され、「複合舞台芸術(パフォーミング・アーツ)」を展開するグループである。今回の公演のテーマは「no direction(ノー ディレクション)」。舞台とはいえ、演劇のようなストーリーは無くダンス、音楽、映像を中心にパフォーマンスが進められるため、始めのうちは戸惑うが、90分間じっくり鑑賞し思考を巡らしていると、終わるころには自分の中で何かしらのイメージが出来上がってくるのがおもしろい。それは、混沌とした現代社会に生きる人間の有様で、創造と崩壊がくり返され、人間の幸、不幸に関係なくどこかへ突き進んでいくような世界のイメージであった。特に結末があるわけでもなく、完成型というものも存在しないような表現であった。これは、「no direction」というテーマのもと各ジャンルが予定調和的な完成度を求めるすり合わせをしない演出方法がもたらしたとても危うい表現だが、何か枠を突き破るような強さを感じた。
 今、芸術祭として都市空間で展開されるアートに求められる力も、混迷を極める現代社会にぶつかり、突き破っていくような力なのではないだろうか。そうした力に触れることにより、我々は数字やお金だけに頼ることのない価値観を得られるのでは。今後のあいちトリエンナーレの展開に期待を感じさせる公演であった。

(2009.4.13/堀内研自)