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老舗問屋街を先端文化の発信拠点に〜名古屋市中区錦二丁目における取り組み〜/名古屋市中区

 名古屋市中区錦二丁目は、長者町繊維問屋街として戦後大変栄えた地域であるが、近年は廃業するところが多く、問屋街としての活気は失われていた。しかし、2000年に入ってから、地元商業者を中心として、新しい街のカラーをつくるための様々な取組みが行われてきており、次第に注目が高まっている。
 一連の取り組みのきっかけとなったのは、2000年の「長者町50年祭」であり、この時にシャッターペイントやクリエイターによるフリーマーケットを実施したところ、2日間で6万人もの来場者があり、これがその後の活動の原動力となった。 翌2001年からは、地元企業やフリーマーケットが出店する「ゑびす祭」が秋の恒例行事となる。そして、地元の有志が協同で出資した有限会社「長者町街づくりカンパニー」が空きビルを借り上げてカフェやインテリアショップなどお洒落なテナントを入居させた「エビスビルPart1」が2002年にオープン。2003年には「Part2」、2005年には「Part3」がオープンし、新しい人の流れをつくった。また、2008年には長者町の店舗の商品を販売するインターネットサイト「ゑびすモール」もオープンさせている。
 名古屋市も地元の精力的な取り組みに注目し、「伏見・長者町ベンチャータウン構想」を作成し、錦二丁目地区における空きビル活用の支援を始めた。空きビルを、IT、デザイン分野など都市型産業のベンチャー企業などが入居できる小規模オフィスに改修する場合のビルオーナーへの補助や、入居者への家賃補助を行っている。これまでにこの補助を活用して3棟のビルが再生されており、一連のビルは「Nagoya I.D. Lab」と呼ばれている。
 イベントや商売だけでなく、近年は錦二丁目全体のまちづくりを考える取り組みも進んできている。2004年には「まちづくり連絡協議会」が発足し、住民や働く人から募集した短歌による「まちづくり憲章」を作成。現在は発展して「まちづくりのマスタープラン」に取り組んでいる。また、2008年にはまちづくりを専門とする大学研究室の活動やまちづくりの会合の拠点となる「まちの会所」がオープンし、若い力を得て、新しい街の姿を模索する取組みが進められている。
 これらの活動が継続して取り組まれているのは、問屋街が盛んだった頃からのコミュニティが今もしっかりとしており、地区住民や商業者が街に強く愛着を持っているということが根底にあるようだ。地区がまとまっているために、色々なことを比較的スムーズにできる環境がある。錦二丁目は栄と名駅の中間という好立地にあるため、特に何も計画しなくとも、マンションなどの立地は進んでいる。しかし、外部資本などによるバラバラな開発に任せるのではなく、地元住民や商業者が将来のまちの姿を描きながらつくっていくということが大切である。地域の人々による着実な取り組みは次第に大きな流れとなっており、「繊維問屋街」に変わる新しい街のカラーが少しずつつくられつつある。

「まちの会所」に置かれている錦二丁目の模型
Nagoya I.D.Lab 1号館
(2008.8.18/伊藤彩子)