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富山の逆襲/鷲塚飛男著

言視舎/2017年12月20日発行
 コンパクトシティの先駆けとして一世を風靡した富山市を含めた富山のフィーチャー本である。
 富山市が中心市街地活性化基本計画(初期)を策定し全国第一号の認定を受けてから既に10年が経過した。10年ひと昔と言われる中、この10年間で当時の活性化基本計画がめざしたものも変化し、第三期計画へ移行している(平成29年4月〜平成34年3月)。そんな富山市を中心とした富山県全域をフィーチャーし、富山県内の様々な分野の活性化の取組みが紹介されている。
 富山の印象は、日本海に面し東は立山連峰、南は日本アルプスに囲まれ、豊かな自然環境が身近にあり、地味ながらも石川(金沢)とライバル関係の中で北陸の活性化に取り組んでいるといったところである。
 本書は、富山のアピールポイントを全面に、小京都と称される宿敵金沢との話題も交え、富山の魅力を紹介している。富山市以外の市町の情報を目にする機会が多くないなかでは新鮮で、富山の文化や暮らしにふれるきっかけになった。近年では、開業した北陸新幹線の停車駅問題などもあったが、関東、関西が北陸側でつながり、活性化に向け躍進してきている状況などを知ることができる。
  富山の企業紹介では、全国の銭湯や温泉の風呂桶を宣伝に取り入れたケロリン(内外製薬)、小学校入学で必ず手にしたジャポニカ学習帳(ショウワノート)、オロチなど奇抜なネーミング、デザインが注目された日本で10番目の自動車メーカー光岡自動車など、メジャー級からレアながらも印象に残る商品を世に送り出した数社が立地する。
 富山の奮闘は、石川とともに北陸を盛り上げるうえで重要なことだが、富山市に限ってみると、ここ数年富山市近隣都市では、アウトレット(小矢部市)やコストコ(射水市)など大型商業施設が富山市内への出店を避けてか、相次いで開業するなど、同時期に初期の中活認定を受けた青森市とともにその成否が問われてきている。第三期を迎えた中心市街地活性化基本計画では、そうした時代の移り変わりを反映させ熟成されてきていることと思うが、富山を今以上に魅力ある都市へと導くうえで、県都、富山市の取組みにも引き続き注目していきたい。
 (2018.3.6/村井亮治)