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地域経済は再生できるか/中山徹著

新日本出版社/1999.3.5

 「自治体破産」が現実の問題となってきた中で公共事業に対する批判が高まっており、それに関する書籍も多い。本書のその1つといえるが、自治体政策という点で4つの政策的争点をあげ、それを丁寧に解説している。論理展開が明確でわかりやすい。

 最初に、自治体政策はどこも同じと題して、大半の自治体で現状や将来像、行政の果たす役割に対する認識が共通していることを、札幌、新潟、名古屋、大阪、福岡の例を出しながら解説している。すなわち、これらの都市はかつては交易、産業の中心であったが、近年、その傾向を低下させている。これからの国際化時代の波に乗ることができれば、かつて以上の中心都市として発展できる。そのためには、行政がそれに必要な先行投資を行い、国際競争に勝つための基盤整備をおこなわなければならないと。

 指摘されてみれば、まさにそのとおりであり、同じような方向性で全国の自治体がまちづくりを展開しようと思っても成功するはずがない。ある意味では、この指摘は我々コンサルタントに対する警句であるともいえるよう。

 本論である4つの争点としては、まず、第1に大型公共事業と社会保障のどちらを重視すべきかという点を解き明かしている。ここでは具体のデータを用いながら、公共事業よりもむしろ社会保障の方が経済効果が高いことを示すとともに、公共事業を削減した場合の中小企業問題についてもその方向を明らかにしている。それが第2の争点の地域経済対策の中心をどこにおくかという話につながっていく。さらに、行政責任や市民参加の問題についても触れている。

 公共事業を削減してそれを福祉にまわせとお題目のようにいのではなく、それに対する様々な意見に対して丁寧に反論している。筆者は私と同年代であるが、このようなわかりやすい論理展開の仕方は大いに学びたいと思う。

(1999.4.1/石田)