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集合住宅と日本人〜新たな「共同性」を求めて〜/竹井隆人 著

平凡社/発行日

 仕事柄、マンションの計画に関わることが多いが、マンションの入居者の中には自治会に加入しない方が多く、地域のコミュニティの形成に大きな影を落としている。なんとかならないものかと目に付いたのが、この「集合住宅と日本人」という本である。
 本書では意図的に「コミュニティ」という言葉の使用を避けている。理由は「コミュニティ」という言葉が「ある種の言霊にも似たイリュージョン(幻想)を排す」からである。実務でも、まちづくりの名のもと生み出されるコミュニティが、親睦のみコミュニティ、一過性のコミュニティ、特定の者しか参加しないコミュニティ等々であった場合、それらが地域の問題解決を実行できる組織に成りえるのかという疑問は常に持ち続けていた。同時に、本書で言及されている、「コミュニティ」という言葉の使い方に対する批判は、耳の痛い話でもあった。
 本書では、政治学の立場から都市居住の諸問題について、「私的政府」を中心とする「共同性」を形成することが問題解決の大きな力となることを主張している。ここで言う「私的政府」とは簡単に言えばマンションの管理組合のような組織、「共同性」とは集団における個人の権利や自由への制限を共同する性質である。元々、マンション住人の地域参画の問題から手に取った本に、そのマンションの管理組合的な組織に問題解決のヒントがあったという結論に新鮮な驚きと共に大きな可能性を感じた。 そして、集合住宅における「共同性」という視点から日本人論を展開している点はとても読み応えがあった。

(2007.11.22/堀内 研自)