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成功するコミュニティバス−みんなで創り、守り、育てる地域公共交通

/中部地域公共交通研究会編著/学芸出版社/2009年11月30日

 公共交通分野における2000年以降の規制緩和により、鉄道やバスの需給調整規制が廃止されたことにより、地域の鉄道やバスの路線の廃止・撤廃が相次いでいる。それに伴い、公共交通空白地などでの地域の移動手段の確保が重要視され、武蔵野市のムーバス(1995年導入)などを先駆けとし、各地でコミュニティバスが導入されている。
 本書は、地域公共交通を市町村や地域が自ら創り、育てていくことを目的とし、コミュニティバスの導入により地域の求める公共交通を実現し、存続するための基礎情報を網羅・詳述している。例えば、対象地域の特性とニーズを把握する際には、統計資料、アンケート、ヒアリング、ワークショップといった基本的な調査方法を紹介するにとどまらず、それらの調査結果をふまえてコミュニティバス運行の妥当性を検討する必要がある。すなわち、コミュニティバスの導入自体が目的ではなく、導入が困難であれば、タクシー、スクールバスなどの他の移動手段にするといった見極めが重要だと指摘している。費用負担の計画については、コミュニティバスの運賃の決め方や運行にかかる費用から収入見積もり、資金調達、サービスと費用の関係などの要点を経済学的観点を交えて解説している。バスの運賃を無料あるいは100円にすることが必ずしも効果を挙げているわけでなく、バス沿線の地域住民や企業から含めた費用負担、サービス改善などをふまえて運賃を決めるべきであるとしている。さらに、導入に対する地域での共通理解を得るため、地域参画の方法についても解説している。地域住民や利用者、市町村、バス事業者、国・都道府県といった各主体の役割を整理した上で、地域公共交通会議制度(2006年の道路運送法改正に伴い制度化)や地域公共交通活性化・再生法(2007年施行)などの新たな制度の活用方法を説明している。
 本書はこれからコミュニティバスを考えている地域だけでなく、現在運行している地域で見直す際にも参考になる一冊である。

(2010.1.6/浅野 健)