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日本版コンパクトシティ 地域循環型都市の構築/鈴木 浩 著

学陽書房/2007.2.25

 コンパクトシティの議論が急速に広まっている。欧米では、環境問題を背景に生まれてきた概念であるが、わが国では中心市街地空洞化をきっかけにコンパクトシティに対する関心が高まってきた。本書では、このような日本特有のコンパクトシティをめぐる動きの背景についてわかりやすく解説している。

 筆者は東北地方をベースに「まちなか居住研究会」「コンパクトシティ研究会」を立ち上げ、さらに福島県における商業まちづくり審議会や「まちづくり三法」改正をめざした商工会議所の委員会に参加された。その経験を踏まえて整理されている日本版コンパクトシティの課題は説得力がある。その1番目にあげられているのは、わが国におけるコンパクトシティ論へのもっとも直接的な契機となった「中心市街地活性化問題と大型店問題」であるが、もっとも多くのページを割いているのは「住宅政策とコンパクトシティ」であることに注目したい。
 住宅政策の制度的枠組みの変化について検討するとともに、地域社会再生、地方自治の発展、人口減少・高齢社会における安全・安心の居住の確立という視点から、「地域居住政策」という考え方が提起され、具体的な課題としての「街なか居住」についての検討が行われている。近年のマンションブームについて、コンパクトシティの考え方とそこでのコミュニティ再生を基礎とした「街なか居住」といえるものかどうか定かではないとし、「街なか居住」は単なる既成市街地の人口回復策ではないという指摘は重要だ。その他、都市計画と農村計画の連携の課題についても都市住民として考えさせられる。
 「すでに拡大してしまっている都市をコンパクトに再編できるのか」などコンパクトシティ論でよく出される疑問についても応えてくれている。コンパクトシティについて考える上でしっかりと学びたい書である。
 

(2007.9.3/石田 富男)