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モビリティ・マネジメント入門 −「人と社会」を中心に据えた新しい交通戦略− 
藤井聡・谷口綾子 著

学芸出版/2008.3.10発行

 過度に自動車に依存した交通体系を改めることは、環境政策、都市政策、福祉政策など様々な側面で重要な課題となっている。 そのための方策として、様々なハード施策(LRTの整備など)やソフト施策(自動車の乗り入れ規制など)があげられるが、実施は容易ではない。財政問題のみならず、自動車利用が当たり前になっている人々にこうした施策の賛同を得ることは難しい。 しかし、人々の意識や行動が少しずつ変わっていけば自動車への依存状況を改善し、自動車からの転換(モーダル・シフト)が可能となる。
 モビリティ・マネジメントとは、 一人ひとりのモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向に自発的に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通政策のことである。本書では2000年前半以降、我が国においても様々な施策展開が行われるようになったモビリティ・マネンジメントの事例を、まず海外での先進的な事例を紹介した上で、我が国における様々なタイプの取組みの代表的事例を紹介している。特徴のある代表的事例をとりあげ、わかりやすく解説しているので、交通計画に詳しくないものでも理解しやすい。
  「コミュニケーションによって、人々の意識や行動が実際に変わり得るのか?」
 日本に新しいタイプの交通政策の考え方が知られるようになった当初は、この点を明らかにするための実験的取組みが中心だったという。海外事例のような大規模な展開は、予算の制約から難しく、その中で「コミュニケーションアンケート」や「ワンショットTFP」など日本固有のコミュニケーション手法が開発された。費用対効果の高い施策の開発が促進されたこともあって、近年、急激に実施件数が増加しているという。
 アンケートに答えてもらうことを通じて、参加者の意識と行動の変容を期待するというコミュニケーションアンケートという手法は、交通問題に限らずまちづくりの様々な側面でも活用ができそうだ。様々な分野で「マネジメント」の重要性が高まっている中で、交通分野における新しい取組みに注目していきたい。

(2009.5.25/石田富男)