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空間革命/ 植村公一著
平成21年3月25日/講談社発行

 先日、今年の相続税路線価が公表され、全国的な土地の値下がりに関する話題が新聞各紙に掲載された。土地の価格は、路線価に限らずここ数年値下がり傾向にあり、昨年からのアメリカを発端とした経済不況もあって、国内の建設・不動産市況の低迷といった問題が深刻化している。
そうした中で手にしたこの「空間革命」は、資産価値が低迷する土地をうまく活用して使うことで価値を高める方法を紹介している。
 土地価格の下落は、経済に様々な影響を与え、企業や個人事業者の業績悪化を引き起こし、結果として資産処分による補てんを図ろうとするが地価下落で買い手がつかず負の連鎖を引き起こしている。本書は、そうした“死んだ土地”を安易に手放すのではなく、ポテンシャルを引き出し活用することで蘇えらせ、本業の業績回復につなげる手立てを示している。土地再生に向けたポイントには、地主自らが“土地を経営する”発想をもつことをあげている。土地活用の事例としては、マンション再生や工場などが取り上げられ、事業計画や施設計画の立案には、第三者の提案に頼らず地主自らが自身の土地の利益を生み出す環境作りが大切と唱えている。
 土地に対する価値観は様々だが、資産をより効果的に活用し利益を得るためには、地主の意識改革が求められる時代になったといえる。再開発事業は、土地を使い資産価値を高める手法の一つとしてこれまで全国各地で取り組まれてきた。しかし、権利者の中には様々な事情から再開発を機に転出するケースも少なくない。我々コンサルタントには、土地を権利変換して資産活用することに経済的魅力が感じられる事業計画を提案し、権利者とともに事業構築を図ることが必要で、著者の思いと共通する。昨今は、厳しい不動産市場により事業計画の構築すら難しいケースもあるが、いずれは経済が回復することを想定すれば、今の時期に決断し事業構築を図ることも、土地の有効活用には大きな意味をなすと思われる。今後の土地活用、再開発には、土地を経営する発想、マネジメントの視点が今まで以上に求められてくる。

  (2009.7.6/村井亮治)