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景観にかける 国立マンション訴訟を闘って/石井一子 著

新評論社/2007.10.25

 景観利益を認め、景観法制定のきっかっけとなった国立マンション訴訟の顛末を市民団体代表の石井氏が語る。
  すでに入居が始まっているマンションの20mを超える部分の撤去を命じる判決がでた時は衝撃的だった。マンション紛争が各地で相次ぎ、いずれも住民側敗訴というのが常であったために、予想外の出来事であり大きな話題となった。この2002年12月の東京地裁判決に続いて、名古屋地裁でも翌年3月に白壁マンション建設禁止仮処分が決定された。時代は変わったと思わせるできごとだった。
 残念ながら、ご存じのようにその後、白壁では業者がマンションの高さをやや低くする案を提示したことで仮処分決定が取り消され、国立では2006年3月の最高裁によって上告棄却。「景観利益」は認めたものの、建物は「景観利益」を違法に侵害するものではないとして撤去は認められなかった。
 この本を読むと、当時の住民と明和地所(マンション業者)がどのようなやりとりをしてきたかがよくわかる。 明和地所の近隣説明書の内容に唖然とし、行政職員の及び腰の姿、裁判所の理不尽な判決にいらだちを覚える。
 日本人は衣・食に関しては素晴らしい美的感覚を持っているのに、住に関してはおもちゃ箱をひっくり返したような環境のなかに甘んじて住んでいるケースが多いのは何故かという問いかけは、まちづくりに関わっているものなら誰もが感じていることだろう。その点についても国立問題を通じて感じたことを指摘している。
 石井氏は高島屋で常務までなった女性だが、その自分史についても語られており、会社定年後の人生をどのように生きるかといった点でも多くの示唆を与えてくれる。「この問題を通じて世相を見た思いがする」という言葉は、企業の一線で働いてきた企業人の言葉だけに重い。市民の奮闘状況や様々な思いが伝わってくる好著であり、 「読みだしたら途中でやめられなくなるほど面白い」と絶賛する辻井喬氏の言葉に 納得だ。

(2008.8.4/石田 富男)