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現代地域メディア論/田村紀雄・白水繁彦著

 (株)日本評論社/平成19年12月10日発行

 長年携わってきたJR勝川駅前の再開発事業が昨年末に竣工し、現在は書類や構築してきた管理運営の情報を事業推進母体であった市街地再開発組合からビル管理を担う資産管理法人へと引き継ぎを進めている。一方で、勝川の商店街ではこれまでの月に一度の“弘法市”開催などの実績を活かし、新たに春日井市や周辺都市をエリアとしたコミュニティFM局の開設や春日井市内の主な地域を巡回するコミュニティバスの運行が検討されている。再開発ビルを拠点として周辺地域を対象とした新しい仕掛けによる活性化策が進められている。
 本書は、コミュニティビジネスの中でもメディアを活用したビジネスの今を取材し、実態、期待、問題をまとめている。本書によれば、コミュニティFMの基地局は2006年末時点で200局を超え、地域メディアとしての地位を確立し今なお増え続けているという。コミュニティFMの特性として(1)収益の基盤が自主制作の放送番組にある(2)事業の手軽さと多様なモデルの可能性(3)物語性の強さの3点を挙げている。特に“物語性の強さ”は、地域の資本で地域住民がパーソナリティを務め話題を提供することで市民による手作りの放送局としてイメージが強くなり、物語が創造されやすくなるという。一方でFM局の事業採算、経営の安定性を問題視し、具体的には収入源の確保やボランティアスタッフによる編成の限界、リスナーの獲得などの点を挙げている。コミュニティFMは、民間事業よりむしろ社会的事業として捉え、人と物語に支えられて持続していくとまとめている。
 話題を勝川に戻せば、勝川は商店街の組織力やキーマンとなる人材がいるなど、コミュニティビジネスを起業し事業を継続する条件は揃っているといえるだろう。FMやバスのへの取り組みは準備段階だが実現されるのもそう遠いことではないと思われる。勝川は、ハード事業がほぼ収束したことからソフト事業がこれまで以上に充実されれば地域の魅力はより高まることだろう。

(2008.4.11/村井 亮治)