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高岡市 山町・金屋町視察
(愛知登文会 文化財建造物保存・活用講座にて)

 当メルマガの第304号や306号でもご紹介している愛知登文会(愛知県登録文化財建造物所有者の会)主催の文化財建造物保存・活用講座で、文化遺産や歴史的建造物に関する取り組み事例を学ぶ県外現地視察として高岡市と金沢市を訪問した。今回は、高岡市の山町・金屋町についてご紹介したい。
 富山県の北西部に位置する高岡市は、慶長14年(1609)に前田利長により高岡城の城下町として開かれたまちで、高岡銅器や高岡漆器など、藩政期以来の長い歴史の中で受け継がれてきた「ものづくりの技」が脈々と息づいており、今回訪問した山町や金屋町はそれらの伝統工芸と歴史的な町並みや歴史的建造物とが相まって、風情あるたたずまいをみせている。
 まず山町は、土蔵造りの町家が残るまちなみが特徴的で、平成12年、市街地に約600m続く山町筋が重伝建に選定された。山町は、明治33年(1900)の大火でまちの3割を燃えつくしたが、復興にあたり、当時の都市防災計画にしたがって土蔵造りの町家が建てられるようになった。中でも、「菅野家住宅」は重厚なつくりで、1階は格子戸が表に出ているが、戸袋から鉄の扉を取り出して前のレールにはめると木部が全く表に出ない造りになっている。火災時の延焼を防ぐ意味でこのような造りになった。大屋根の一番上の雪割りの剣の形をした瓦や左右の鯱、鳴門の渦巻き模様の箱棟、左右の柱など、意匠にも工夫がみられる。
 一方の金屋町は、千本格子のまちなみが特徴的で、こちらも平成24年に重伝建に選定されている。金屋町は、前田利家が高岡開町に際し、砺波郡西部金屋から7人の鋳物師を招き、東西50間、南北100間の土地を与え、鋳物づくりを行わせたことに始まる高岡鋳物発祥のまちで、「鋳物師町(いもじまち)」の種別での重伝建の選定は全国初である。鋳物師町ということで、金屋町には千本格子の町家以外に、大正13年に建設され平成12年まで稼働していた国の登録有形文化財にも登録されている「旧南部鋳造所」や「キュポラ工場跡地」など貴重な遺構が残されている。
 高岡市では、歴史まちづくり法に基づいた歴史的風致維持向上計画(歴史まちづくり計画)を策定し、平成23年に国の認定を受けている。その中で、市内の登録有形文化財等を歴史的風致形成建造物に指定し、その修理に対する補助金の交付を平成24年度から実施するなど、歴史的建造物の保全に向けた取り組みが進められている。一方で、今回訪問した金屋町では、金屋まちづくり推進協議会が設置され、協議会主導のもと観光客を呼び込む策の一つとして新たな土産品の開発に取り組むなど、「民」による地域の盛り上がりが感じられた。今後も高岡市の「公」「民」双方による歴史的まちなみ、歴史的建造物の保全・活用の動向に注目していきたい。
:菅野家住宅(山町)
:菅野家住宅(山町)
レンガ造りの銀行建築(山町)
レンガ造りの銀行建築(山町)
金屋町のまちなみ
:金屋町のまちなみ
旧南部鋳造所-国登録有形文化財(金屋町)
旧南部鋳造所-国登録有形文化財(金屋町)
キュポラ工場跡地(金屋町)
キュポラ工場跡地(金屋町)
(2013.4.15/喜田祥子)