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ユニバーサルデザイン型社会をめざす熊本県の取り組み

 バリアフリーやユニバーサルデザイン(以下、UD)の分野について熊本では、「ヒューマンネットワーク・熊本」「バリアフリーデザイン研究会」の活動など民間の動きが先行している。この流れを受け、熊本県は1995年3月に「やさしいまちづくり条例」(熊本県高齢者及び障害者の自立と社会活動への参加の促進に関する条例)を制定した。民間施設への補助事業、フォーラム開催事業、表彰事業など、UDに取り組む前から、高齢者や障害者のバリアフリーを中心に事業を展開していた。

 熊本県のUDへの取り組みは、塩谷義子知事が2000年4月に初当選した直後に始まる。同年6月には県幹部職員を集めた庁内講演会で知事自ら講演し、以降、県庁の部局・関係団体の実務者・県民(公募)で構成されるUD研究会などでの検討を踏まえ、2002年2月に「くまもとユニバーサルデザイン振興指針」を策定した。さらに、UDによる建物づくりを推進するため2003年3月に建築ガイドライン、2004年1月に既存の建物の評価マニュアルを策定した。

 UDを取り入れた事例としては、今年の3月に開通した九州新幹線の新八代・水俣駅整備などの公共施設づくりをはじめ、民間でも陶磁器などのUD製品づくり、商店街での電動スクーターの無料貸し出し・タクシー会社による宅配などの事例が出てきている。県庁本館の建替えでは、工事の段階でワークショップを取り入れ、様々な立場の人から現場で実際に意見を聞いて工事に反映した。

 振興指針や建築ガイドラインはUDの考え方がすっきりと整理されており、県庁所在地である熊本市を中心に徐々にUDの考え方を取り入れた施設が増えている。しかし、熊本市以外の市町村では、市民・自治体ともUDへの理解があまり進んでいないようである。この理念を県内全域へどのように普及させるかが今後の課題であろう。

 しっかりした市民グループが10年以上もの間、バリアフリーのまちづくりに取り組んできた結果、日本初の路面電車での低床車両の導入や公共施設のバリアフリー化など、少しずつ進んできている。次に訪れた時にはさらにUDやバリアフリー化が進んでいるであろう。そんな期待を持たせる街だった。


●熊本県のUDのページ    http://ud.pref.kumamoto.jp/index_main.asp


●熊本を代表する市民グループ

バリアフリー研究会
医療、福祉、保健、建築分野などの専門家や市民が集まり、高齢社会を踏まえた生活環境を考えるグループとして発足。バリアフリー住宅やノンステップバス・低床電車の導入に取り組んでいる。1992年4月発足。

ヒューマンネットワーク・熊本
障害を持った仲間への自立支援など、誰もが安心して生きていける社会を目指してまちづくり活動を実践。バリアフリーでやさしい建物を利用者の立場で選び出し表彰する「バリアフリーデザイン大賞」をバリアフリーデザイン研究会と共に創設した。1991年12月発足。

●参考図書

バリアフリーデザイン研究会
「バリアフリーが街を変える 市民がつくる快適まちづくり」
学芸出版社、2001/4/30


 熊本県庁内のわかりやすい案内表示


 熊本県庁本庁舎の1階受付け
 本庁舎では、1階は誘導ブロックが貼られているが、 その他の階は極力誘導ブロックを減らしている。  視覚障害者の方への対応として、1階受付けで担当部署につなぎ、  目的階で担当部署の職員がエレベーターまで迎えに来る。 ハードと人的対応の組み合わせで対応=熊本のUDの方針。



 熊本市内では低床路面電車が交差する風景もしばしば見られる。

 低床路面電車は導入されたが、 幅が狭い電停や歩道橋でしかアクセスできない電停も残っている。 UDに向けて改善すべき課題である。


 

熊本学園大学
 早くからバリアフリーに取り組み、敷地全体をかさ上げ するなど、障害を持つ方の受入に対応している
 (2004.6.22/浅野 健)