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つくば研究学園都市、取手市井野農住団地他
(財)都市農地活用支援センターまちづくり事例研究会(1996.10.4)

参加目的

 良好な住宅地の形成と同時に営農の継続を図る農住組合による土地区画整理事業は、全国的にもそれほど進んでいるとは言い難い。その中で成功した事例のひとつである取手市の井野農住団地の事業経緯、内容等を把握し、農と住の調和したまちづくりの理解を深める。

 筑波研究学園都市(以下筑波、今回の視察の開催趣旨とはやや異なるが)は、自分自身関東に住んだ経験がありながら訪ねたことがなく、また住都公団主催のフォーラムでたびたび取り上げられ関西学研との比較も含めて関心があることから、現地視察によりまちの規模、雰囲気等を肌で感じる。

●視察概要

 参加者は40名弱。自治体および農協の職員が全体の約2/3程度と思われる。

 東京駅に午前9時半までに集合、その後貸し切りバスにて現地へ。短時間で4ヶ所をまわるのは時間的に余裕がなく、現地をゆっくり見れなかった(特に筑波)。視察内容は以下の通り。

視察先

説明者

主 な 内 容

筑波研究学園都市

住都公団つくば開発局

友村氏

  • 東京の過密緩和および高水準の研究・教育を行う拠点形成を目的として、 昭和38年に閣議了解され当地に建設。当初10年は用地買収、次の10年は国の研究機関を中心に移転、ここ10年余は都市の熟成期間として発展してきた。研究学園地区の計画人口は10万人であるが現在その6割が住む。
  • 今後の課題のひとつとして、地元住民、地元行政とのつながりを深め、地域に根付いた都市をめざすという。
  • 現地を三井ビル19Fの展望フロアーから望む。

つくば市春日定期借地権付住宅団地

太平住宅 つくば支店

渡辺氏

  • 総工数15戸、民間による注文建築方式の定借団地。筑波に勤務する研究者をねらって開発、競争率は4倍を超えた。入居者の年齢は平均38歳(下は28歳、上は53歳)と当社物件の中では比較的若い。
  • 当団地では建築協定を締結している。内容としては3F建ての禁止、ブロック塀の禁止など、入居者側の住環境維持の意向が強かったという。
  • 敷地内には共同の遊歩道も整備されている。

学園都市内二の宮地区

住都公団つくば開発局  

友村氏

  • 住都公団および民間による住宅団地。戸建地区と高層住宅地区がある。高層住宅の賃貸は現在は人気がなく、空室も目立つ。

取手市井野農住団地

JA茨城みなみ

稲葉氏

  • 当初は組合施行の予定であったが、所有面積の大きい3人の地権者が営農意欲が強いことから農住組合で事業を実施。認可から9年後の平成7年3月に竣工。共同住宅区内に4棟(42戸)の賃貸アパート(特優賃)はいずれも人気があり即満室となる。
  • 農協職員と地権者の連携による努力のたまものだそうである。

●雑感

 たまたま行きのバスで横に座った方が名古屋市内で会計事務所を開業している税理士で、最近農家を相手に相続税や固定資産税の相談をしているそうで、土地(農地)の有効活用と税金対策、公的組織と地域住民との関係の難しさを痛感しているそうだ。また異なる業界の方との交流は違った視点から物事を考えるきっかけにもなるので今後にも繋げていきたい。

 筑波は東京都心部と直結する常磐新線や成田空港とも結ばれる首都圏中央連絡道など具体化しているプロジェクトがいくつかあり、今後も一層の発展が望まれている。その一方では学園都市内では既に古くなった住宅団地や一時のブームで去った大規模ディスコの建物が残り、景観的にも芳しくない光景も見られた。学園都市が熟して行く中での新旧の入れ替わりが今後の課題のように感じた。


(1996.10.11/加藤 達志)